くらし 猫本屋のひとりごと

2017年 寒中お見舞い申し上げます 

猫店員とは

昨年度は初代店長ゴンチャロフ(享年19歳)の喪中のため新年のご挨拶を失礼いたしました。今年も皆さまとその愛猫にとって素晴らしい一年となりますように、店員ともどもお祈りしております。
さて、当店には猫店員たちが4匹おりまして、さまざまな働きをしています。
本日は彼らについてお話しようと思います。

初代店長ゴンチャロフ

彼に出会ったのは、まだ改装前の博多駅の中央改札口前。その柱の陰ですやすと眠る生後1か月くらいの仔猫がいました。
やせ細って目やにのついた姿に、どうしてもそのままにしておけず連れて帰ることに。
当時はまだ動物禁止の集合住宅に住んでいましたので、ベランダにも出せずにこっそり飼うことにしました。しましまのオスの仔猫はなぜかロシア名の「ゴンチャロフ」という名前を付けられ、一人っ子として愛情を一心に受けておぼっちゃま気質で育ちました。
その後、やはり可哀想だということで一軒家の借家に移り、悠々自適の生活を送っていたのですが、ある日彼の天敵が現れました。
それは赤ん坊。100%の愛情が半分以下になったと感じた彼は、お腹や尻尾の毛がなくなり、今までやったことのなかった家出を繰り返しました。
しかし、心の広い彼は次第に憎い相手を「弟」として受け入れ、一緒に遊んでやるようになりました。その後も増え続ける後輩猫たちの指導も行い、開店前後のくじけそうになる私を励まし続けてくれた強く優しい存在でした。
仕方なく弟と遊んでやるゴンチャロフ(右)

大番頭もじゃ

次にやって来たのは、くりくりした緑のお目目が自慢のしま猫です。
彼もやはり路上育ちで小倉城庭園の松の木の下でカラスに狙われていたところを助けだされ、我が家にやってきました。長じて彼は気の良い、後輩たちの面倒をよく見る優しい猫に育ちました。
また彼は「自分アピール」が大好きな猫で、商品写真を撮っているとすぐにフレームインしてくる癖がありました。
仕方なく彼を入れたままの写真を当店のサイトに載せると、お客様に受けが良かったため
以降彼は「広報部長」として君臨することになりました。現在はゴンチャロフ亡き後の「二代目店長」を粛々と勤めています。
最近は新入りと一緒に、原田マハさんの小説(「飛梅」 新潮社 『吾輩も猫である』2016年刊 に収録)に登場しています。
眼も身体(お腹)も大きい、ゆったりとした猫。面倒見の良さは当店一!

野性味あふれる広報部長 チーチー

彼は生後すぐに近くの公園でタイヤの中に捨てられて泣きわめいていた黒猫です。
やせ細って蚤だらけの身体、ぎょろぎょろした眼とお世辞にも可愛い子猫ではありませんでしたが、成長するにつれてぴかぴかした美しい毛皮が自慢のスレンダーな猫になりました。とても内気な猫で、取材陣泣かせ。気が向くと出現しますが、モノクロームの彼が入ると画面が引き締まるので、撮影時には人気があります。
仔猫が嫌いで、後輩たちの面倒はまったくみてくれませんでした。
精悍な外観とは裏腹にナイーブな気質の猫です
(写真/Hiromasa Otsuka photo office overhaul)

唯一の女子店員=看板娘チロ

当店の看板娘、チロちゃんもやはり路上生活からの就職組です。
野良生活が一番長かったせいか、少々警戒心が強いのですが、いちばん聞きわけが良く
取材陣の「ここに座って」とか「ここに猫がいるといいなぁ」というリクエストを素早く理解し、ちゃんとポーズをとってくれるおりこうさんです。
ただ単にカメラ好きなのではないかという意見もありますが、アホで甘ったれな男子に交じってもくもくと働いてくれます。
チーチーと同じで、後輩の面倒見はゼロどころかマイナスでした。
この家(店)には変なモノばかりいるわ!私がしっかりしなきゃ。
(写真/Hiromasa Otsuka photo office overhaul)

公家(野良)猫 太宰権帥 飛梅太(だざいごんのそち とびうめた)

去年の春、ゴンチャロフが永眠した後に入れ替わりのようにやって来たのが茶トラのこの猫です。冷泉家の和歌会に通う原田マハさんからの紹介で京より筑紫に下ってきました。
ご両親は御所生れ、冷泉家育ち。本人は冷泉家の床下生れ&生後2週間まで育った生粋の公家(野良)猫です。風邪をひいた母君のウイルスをもらって瀕死だったところを優しい冷泉家の事務局の方々に助けられました。
命は取り留めましたが、その後遺症で眼に炎症が残りあわや失明かと思われたのですが、手術で開眼。いろんな意味で強運の仔猫です。
性格はやんごとなきお生れながら、とんでもないやんちゃのいたずらっ子。同時にボンボン丸出しの甘えん坊です。
彼の数奇な運命は小説家・原田マハさんによってほぼ実話の「飛梅」というお話になり、生後わずか数カ月で小説デビューしたという、なんとも偉そうな猫です。
現在は机の上のものを残らず叩き落としたり、本の上で寝てしまったりして始終怒られつつ、見習い(丁稚)の日々を送っています。
店長から猫店員としての教えを受ける飛梅太(左)
こんな彼らに囲まれて、私は日々猫本屋の仕事をしています。
彼らの仕事は私が一生懸命パソコンに向かう横で寝る、キーボードを踏んで謎の文字を入力する、わざわざ画面の前に座って入力の邪魔をする、商品包装中に紙に向かって突っ込んでいく、リボンにじゃれる、机の上の落としてはいけないものを落とす、本の箱の中に入って寝る、気に入った本があったら角を齧る、書類の束をバラバラにする、など本当によく働いてくれます。時々目頭が熱くなるほどです。
でも寒い日に膝に乗って柔らかい毛皮で温めてくれたり、ゆっくりと目を細めて微笑んだりしてくれるとそんなおいたもすべて忘れてしまうのです。

当店はこのような感じでやっている猫本屋です。
猫店員ともども、本年もどうぞ宜しくお願い致します。
 
梅太の小説/原田マハほか『吾輩も猫である』新潮社 http://wagahaido.com/shopping/archives/12273
梅太のご実家 冷泉家時雨亭文庫 http://reizeike.jp/
吾輩堂サイト http://wagahaido.com/shopping/