彼女の起業ストーリーVol.1 自分の経験を生かして講師に

 あちこちで色づき始めた紫陽花を見かける時期になりました。
どんよりとした色彩の風景の中でふんわりと咲く紫陽花…この時期だけのこんな風景、楽しみながら過ごしたいですね。
 
 さて、前回のコラムを読んでいただいた方から「迷っていたけど自分も起業に挑戦してみようと思いました」といったご意見をいくつかいただきました。
ありがとうございます!
 
起業を生き方の選択肢のひとつとして身近に感じてもらえたら…と常々考えています。
そこで不定期ながら、実際に起業された女性をこのコラムでご紹介していくことにしました。

少しだけ先を走っている先輩起業家のリアルな声をお届けしますね。
 

1人でも多くの女性に伝えたいという思いを胸に

 
今回ご紹介するのは、pink earth代表の北里ミーナさんです。

乳がんの予備知識とリスク管理情報をレクチャーする「美がん術講座」の企画運営、講演活動、がんで悩む人への個別対応(対話、傾聴ケア、病院同行)といった事業を展開されています。
 
北里さんの事業構想のはじまりはご自身の経験からでした。

2010年に胸のしこりに気づいて乳がんと診断されて以来、標準治療以外のさまざまな療法を試すも効果がなく、2011年に余命1ヶ月という宣告を受けます。

それから抗がん剤治療と手術、さらに脳転移が発覚したことで放射線治療を受けられた結果、がん細胞の転移消滅を確認。

このような治療と経緯を経験してきた中で、患者として痛感した経験を伝えたいという思いが起業につながったそうです。
 
「ピンクリボン運動が行われている、乳がんは早期発見・早期治療が重要、こういったことはほとんどの女性は知識としてもっています。
けれどなぜか検診には行かずどこか他人事だと思っていますよね。
それは検診を受けずにいて結果的にがんを放置し続けた時にどんなリスクがあるのかを想定していないからです」(北里さん)
 
車を持っていれば、故障したり事故を起こさないためのチェックとして定期的に車検を受けますが、自分の体も同じ。
検診という形でチェックし気になる部分をメンテナンスすることが大切だと北里さんは言います。
 
「自分の体が健康かどうかは、実は自分だけの問題ではありません。
日々の生活や仕事を滞りなく進められるのはもちろんですが、大切な家族や仲間を悲しませないことも人生においては重要なことのはず」(北里さん)
 
家庭生活も仕事などの社会生活も、体が資本だからこそできること。
女性なら誰でもなりうる乳がんに関する知識を健康なうちから持っておくことは、人生をより充実させるために必要なんですね。
 
また、こうした意識が病院選びや治療方針などの判断も含めいざという時の備えができる、つまり生きるための選択肢を持てることにもつながります。

その大切さを元がん患者という視点から伝えたい―そんな強い思いで2014年11月に起業。
現在は福岡県内外で精力的に活動されています。


ボランティアでやろうとは思わない

 
北里さんの講座の特徴は、乳がん治療中の人だけでなく、あえて「セルフチェックしていない人」を主な対象者にしているところ。

乳がんになった時のリスクやそのリスクを回避する方法を健康な段階から知ってもらい、体の定期的なメンテナンスが重要であることに気付いてほしいからだそうです。
 
「実際に乳がんになって治療を受けている間、もっと早くこの情報を知っておきたかったと何度も思うことがありました。

乳がんの罹患率は日本女性の12人に1人、いつ自分がなってもおかしくない確率です。

命に直結する問題として乳がんの基礎的な知識を持ち、セルフチェックや乳がん検診を日頃から意識できる女性を増やす環境づくりをしたいですね」(北里さん)
 
がんの啓発の講師を個人で行うという事業は未開拓の分野だったため、北里さんの活動はまず事業内容を知ってもらうことからスタートしました。

起業して約1年半の現在、収益化するシステムの構築は継続中ですが、徐々に活動範囲は広がっているそうです。
 
「ボランティアでやろうとは考えませんでした。
雇用されて働きながらだと時間の確保が難しい。けれど事業にすれば継続し続けるこ
とができるし、うまくいけばがん体験者を雇用したビジネスモデルが確立できると
思いました。


それに、病院や保険会社などと連携が取れてより多くの人に情報を伝えられると考えました。

何より、医療に救われた私が元患者として体験を伝えることで乳がんのリスク啓発が広がり、一人でも多くの女性が救われて結果的に社会への恩返しにつながればうれしいですね」(北里さん)
 
講座の参加者から、命の大切さや当たり前と思っていた日常の大切さに気付いたという感想をいただくたびに、大きなやりがいを感じるという北里さん。

講演活動をさらに広げながら、将来的にはがんの悩みを気軽に相談したり患者同士で共有できるカフェバーをつくるのが目標だそうです。
 

起業、そして事業を続けるために欠かせないもの

 
起業のきっかけや理由は人それぞれ。

ただどんな分野であっても、起業後はその事業を継続させるために雇用されていた時とは違ったさまざまな努力が必要になります。
 
北里さんも講座でご自身の経験を話すだけでなく、実際の闘病中の画像を公開してよりリアルに治療現場の現状を伝えようと試みたり、ネット上に氾濫している情報が玉石混交であることを伝えるために、根拠がある情報を学ぶ努力を続けていらっしゃるのだとか。
 
こうした努力は苦しいもの。
最小の努力でスムーズにビジネスが進むならどんなに楽か…起業して長い私でもいまだに考えることはあります。

けれど自分の事業に対する情熱があれば、努力は苦労ではなく学びに変わる。
だからまいた種が芽吹くまで頑張れる。

これは断言できます!

これをしたいという強い情熱を持てるものがあって、今の働き方では実現できそうにないな…ともし感じているなら。

起業という道にチャレンジする価値はきっとありますよ。



pink earth 公式HP→http://pinkearth.jp/
一般社団法人女性起業家スプラウト 公式HP→http://sprout.gr.jp/
 
 
長菅由美子さん
住空間設計室 CUBE 代表 。(一社)女性起業家スプラウト代表理事。
2001年に独立し、住空間コンサルタントとして住空間全般のコンサルティング、コラム執筆、セミナー講師など福岡県内外の法人・個人を対象とした多数の案件に携わっている女性建築士。夫の転勤によるゼロからの営業基盤の再構築、約3年の出産育児休業のブランクによるリスタートを経験。現在は仕事と双子育児&家事を両立するべく奮闘中。
(一社)女性起業家スプラウト設立時から参画し、副理事としてさまざまな女性起業支援業務を担当。2015年に代表理事に就任。女性の起業支援にも力を入れている。