彼女の起業ストーリーVol.2 目の前にいる人の笑顔が見たいから

 いろいろな反響をいただいている、前回からスタートした『彼女の起業ストーリー』。
起業して数年以内の、少しだけ先を走っている女性の声をリアルに感じていただいている方が多くてうれしいです。
 
私は立場上、福岡県内外の女性起業家の皆さんと話す機会が多いのですが、福岡は特に女性の起業熱が高いと感じています。考えるだけでなく実行に移すバイタリティあふれる女性が本当に多い!

起業を検討中でしたら、そんな女性たちがほんとうに身近に、そしてたくさんいるという恵まれた環境をぜひ生かしていただきたいと思っています。
 
ということで、今回もひとりの素敵な先輩起業家を紹介しますね。

多くの女性が憧れるカフェ経営を実現したストーリーです。

 夢を持ち続けることが行動するきっかけに~小林昌代さん


子どもの頃、誰しも一度は「将来こうなりたいな」という夢をもったことがあるのではないでしょうか。

東区美和台にあるカフェ「maa’s」のオーナー、小林昌代さんには「いつかは自分のお店をもちたい」という幼い頃からの夢がありました。
 
チラシやHPの作成やイベント企画、輸入食品や日用品の販売、通信販売の事務といったさまざまな業務のご経験がある小林さん。

仕事そのものに充実感を感じていたものの、子どもたちとの時間が思うようにとれないことに大きなジレンマを感じていたのだとか。

子どもたちがただいまと帰ってきたらお帰りと言える。
毎日しっかりご飯をつくってあげられる。
そんな環境がほしいといつしか考えるようになったのだそうです。
 
そんな小林さんにある機会が訪れます。
自転車店を経営しているご両親から「売場スペースを縮小する予定があるからそこを使ったら?」という提案を受けたのです。
 
40数年もの間地域の人に愛されて自転車店を続けてきたご両親の働く姿をずっと見てきていた小林さんにとって、その話はある思いへとつながっていきました。

―自分も地域のコミュニティの場、くつろげる場をつくろう―
 
そんな場をつくっていくためにどのようなスタイルがいいのかをじっくり考えた結果、答えとして出てきたのがカフェでした。

飲食業の経験はアルバイト程度で、具体的に何をどのように始めたらいいのか分からなかった小林さんですが、地域の皆さんが喜んでくれるお店をつくりたいという強い思いを胸にすぐ行動を始めます。
 
まずじっくりと検討して決めたのはカフェのコンセプト。

大自然に身を置いた時に活力をもらえる、時間がゆっくりと流れる、そんなイメージをふくらませて【特別な日常を感じてもらえる場所】というコンセプトを決めました。
 
そしてこのコンセプトが決まったことでメニューや内装のプランづくりも飛躍的に進んでいきます。

カフェで取り扱うメニューのレシピは、価格帯とのバランスや小林さんの希望をまとめた上で、料理研究家の女性から情報を提供してもらいながら一緒に作り上げていきました。

店内の内装もインテリアコーディネーターからプロとしてのアドバイスを取り入れました。
 
「maa’s」の店内にはひときわ目を引く壁面のチョーク画があります。
これは小林さんのご長男やその友人が心をこめて描いたまさに傑作。

小林さんのお姉さんが描いた絵もカフェのコンセプトを体現したものです。
 
こうしてまさに自分の手でひとつずつ積み重ねてつくりあげていったカフェ。
その名もmaa’sは、2015年11月に晴れてオープンとなりました。
 

 お客様との距離感への強いこだわり


幼い頃の夢をかなえた―
言葉にすると簡単に聞こえますが、小林さんはしっかりと現実を見つめて行動し続けています。
 
「起業を決めてからというもの、不安だらけの毎日でした。
夜寝ていてもふと目が覚めて『あ、あれはどうなるんだろう』『こう進めているけど大丈夫だろうか』と気になってしまうこともよくあります。
朝から晩までいつもカフェ経営のことを考えていますね」(小林さん)
 
そんな不安を少しでも解消するために小林さんが選んだのは学ぶことでした。

福岡市内で開催されている起業塾などに参加し、繰り返し勉強することで少しずつ不安を解消していったのだそうです。
 
「私にとって、起業塾に参加したことは自分の思いを形にするための大きな一歩。
きちんと学べたから今何をやらなければいけないかが分かりました」(小林さん)
 
大きな不安を抱えてまでなぜカフェをオープンし経営していこうと思うのか。
その原動力は、小林さんが起業しようと決めた時から持ち続けているある大切な思いでした。
 
「お客様の顔を見て直接会話すというのは楽しいですよ。
次に来ていただいた時はどんな風にしたら喜んでいただけるかなと考えるだけでわくわくします。
何よりありがとうという言葉を直接もらえるのがうれしい。目の前で笑顔を見られることが私の喜びです」(小林さん)
 
通販事務時時代でもお客様とのふれ合いはありました。
しかしそれは商品やサービスをネット上で提供するというドライな関係で、お客様の顔は見えないし声も聞こえません。

その距離が気になってしかたなかった小林さんにとって、カフェ経営はお客様との理想的な距離を実現できる起業スタイルだったのです。
 
「今後は店内にあるイベントスペースを活用したママ向けイベントを定期的に開催したいです。
この地域のママが子育ての期間を楽しく過ごせるためのお手伝いをしたいですね」(小林さん)
 
イベントではワークショップもたくさんしてもらって、ハンドメイド作家さんの作品を販売するコーナーもつくりたい。

小林さんの夢はふくらみ続けます。
 

 起業前に「学ぶ」ことをおすすめする理由

 
最近は起業について学ぶいわゆる起業セミナーがたくさん開催されていますね。

起業セミナーとは、事業計画やマーケティング、開業手続き、資金調達、ビジネスプラン作成といった起業前後に知っていたい項目の基礎的な部分を学べるというものです。
 
起業を考えたら必ず受けなければいけないものではありませんし、「とりあえず実践するのが先」というのもひとつの考え方です。

しかし何も学ばない、もしくは我流で学んでスタートするよりも、起業支援のプロから学んだ知識をもってスタートする方がメリットは大きいです。
 
その理由はいろいろありますが、もっとも大きな理由は「現状を把握できる」という点でしょう。

こうしたセミナーでは、ワークなどを通して自分が今どれくらい物理的・精神的に起業準備ができているのか、何が課題なのかをつかむことができます。

現状を把握できる=今すぐすべきこと、今はしなくていいことの判断がつくということ。

どこに力を注ぐべきかの優先順位がつくと、準備はよりスムーズに有効に進められますね。

小林さんも、起業セミナーで何をしなければならないのかを的確に把握できたことでかなり順調にカフェオープンまで進んだとおっしゃっていました。

また、起業セミナーに参加した皆さんからよく伺うのは「業種は違っても起業という同じ目標に向かって頑張る仲間に出会えてよかった」という声。
 
前回のコラムでも少し触れたように、一人で頑張ろうとするより同じような立場や目標をもつ仲間ができるというのは本当に心強いものなのです。

かく言う私はというと…実はほとんど準備らしい準備をせず勢いで独立しました。

起業セミナーのような学ぶ場が当時ほとんどなかったこともありますが、周囲に起業仲間もいなかったので何もかもが手探り。
まさに孤軍奮闘状態で、軌道に乗るまでは精神的にかなり苦しかったことを思い出します。

ひとりでわざわざ遠回りすることなんてない。

同じ志をもった人と刺激し合いながら学べる環境を、ぜひ最大限に活用してくださいね。


maa's 公式HP→http://maa-s.jp

一般社団法人女性起業家スプラウト 公式HP→http://sprout.gr.jp/
 
 
長菅由美子さん
住空間設計室 CUBE 代表 。(一社)女性起業家スプラウト代表理事。
2001年に独立し、住空間コンサルタントとして住空間全般のコンサルティング、コラム執筆、セミナー講師など福岡県内外の法人・個人を対象とした多数の案件に携わっている女性建築士。夫の転勤によるゼロからの営業基盤の再構築、約3年の出産育児休業のブランクによるリスタートを経験。現在は仕事と双子育児&家事を両立するべく奮闘中。
(一社)女性起業家スプラウト設立時から参画し、副理事としてさまざまな女性起業支援業務を担当。2015年に代表理事に就任。女性の起業支援にも力を入れている。