くらし 猫本屋のひとりごと

猫のお仕事(後編)

あっという間に初夏。皆様の愛猫はお元気でしょうか。夏毛に替わるこの時期、盛大な抜け毛に飼い主の方はさぞかしうんざりしておいででしょう。

 さて、前回からずいぶん間があいてしまいましたが「猫のお仕事 後編」をお送りします。
 

司書猫

まずは、本と猫の幸せな出会い、『図書館猫デユーイ』。真冬のアメリカ・アイオワ州の図書館返却ボックスに入れられていた仔猫がスタッフによって一命をとりとめ、その後図書館でスタッフ(館長?)として働く実話です。
朝は来館者を出迎え、カートに乗って棚に本を戻す作業を見守り、会議に出席し、寝ながら館内を見張る…。本と猫はこの上なく相性が良いのです。

フランスの詩人・ランボーは
 
 僕は持ちたい 家のなかに
 理解のある細君と
 本のあいだを歩きまわる猫と
 それなしにはどの季節にも
 生きてゆけない友達と   
 (堀口大學訳「アポリネール詩集」より)
 
と書いています。
デューイは癌のため18歳でこの世を去りましたが、著者をはじめとする図書館スタッフや来館者に長年にわたって多くの慰めや喜びを与え続けたのです。
 
『図書館ねこデューイ』
https://wagahaido.com/shopping/archives/461

 更生猫

次は人間を立ち直らせた猫、ボブ。映画にもなったのでご存知の方も多いでしょう。

幼少期にいじめを受けて自閉症になり、荒んだ生活を送っていたジェームズ・ボーエン氏。ロック・ミュージシャンになることを夢見てロンドンに来たものの挫折し、ホームレスになり麻薬に手を出す日々。その彼の人生を変えたのが野良猫ボブです。
猫好きだった彼はケガをしていた仔猫を放っておけず、なけなしのお金をはたいて獣医に連れて行き、介抱します。猫は元気になったものの、ホームレスの自分に猫は飼えないと手放す決意をするのですが、仔猫は彼のもとを離れようとしません。
 
「なぜかはよくわからないけれど、ボブの世話をするという責任が僕を少し元気づけた。僕の人生に新たな意義が生まれたと感じたんだ。自分以外の誰か(何か)のために行動することでね」
ボブの得意技、ハイタッチ
 それが動物であっても、相手のために生きて共に生活することで精神的に強くなるのですね。仔猫はボブと名付けられ、彼は薬物を断つことを決意して前向きに生きていくのです。

この物語は世界的に有名な「ボブという名のストリート・キャット」という本や映画になりました。マフラーを巻いた可愛いボブの姿を一度はご覧になったことがあるのではないでしょうか。
ボブのお気に入りは昔も今もボーエン氏の肩の上。二人の絆の強さがうかがえます。

セラビー猫 

次も人間を癒す猫。アメリカのロードアイランド州のターミナルケアがその舞台です。

セラピー猫としてこの病院で育ったオスカーは不思議な能力を持っています。認知症患者病棟をパトロールし、亡くなる数時間前に患者に寄り添って死を見届けるのです。
最初はそれは偶然だとして信じようとしなかった著者(医者)ですが、医者の診断より正確に死を察知する事実に、最初は嫌々ながら、次第に驚きながらもオスカーを信頼するようになります。
認知症というハードな現場に向き合う本人やその家族たち。疲弊していく精神と肉体をたった一匹の猫が救うとはにわかに信じられないお話ですが、オスカーに見送られた家族をもつ人々は彼を「死神」とは思わず、安らかになるよう見守ってくれる天使のようだと感謝しているのです。
私も個人的にゴロゴロいう猫に見守られながら旅立ちたいと思っています。
 
『オスカー―天国への旅立ちを知らせる猫』
 

 供血猫

人間だけではなく、猫を助ける猫もいます。
動物病院で働く「供血猫(きょうけつねこ)」のばた子ちゃんは、病気になった仲間に輸血用の血を分けてあげる貴重な存在。もともとは動物病院に「トイレが上手にできないから安楽死させてほしい」という身勝手な飼い主によって持ち込まれた猫でした。
ばた子ちゃんは最初ひどい人見知りでしたが、スタッフの温かいケアによって心を開き、甘えるようになりトイレの粗相もなくなりました。そして血液を分ける仕事をするようになったのです。
7歳までそのお仕事をし、引退後に癌でなくなってしまいますが、彼女は飼い主の心を癒すだけではなく、仲間の命も救ってきた素晴らしい猫でした。

彼女のような猫だけでなく、日本のあちこちの病院では「供血犬」も自分の身体をすり減らして仲間を救っているのです。
安易に動物を飼い、そして安易に捨ててしまう人が後を絶たない昨今、彼女たちのように人知れず働いている供血猫(犬)の存在をもっともっと人々に知ってもらいたいと思います。
 
『空から見ててね いのちをすくう“供血猫”ばた子の物語』
https://wagahaido.com/shopping/archives/9421

看護師猫

実際に血を分けてあげるとまでとはいかなくとも、動物病院でさまざまな「患者」を癒す猫もいます。

これはポーランドに実在する「動物を癒す」黒猫(ラダメネス)のお話です。2014年の冬に保護されたオスの黒猫は今にも死にそうでしたが、手厚い看護で奇跡的に回復しました。その後、病院にやってくるいろんな病気の動物―猫だけでなく、犬やヘラジカなど種を超えた「患者」―に寄り添い、安らぎを与えるということで有名になりました。
動物の持つ不思議な能力にはいつも驚かせられますね。
『猫の看護師ラディ』
https://wagahaido.com/shopping/archives/18397
ラディが実際に寄り添っている様子

ホテル猫

シリアスなお話が続いたあとなので、ちょっと一息。アルゴンキン(アルゴンクィン)キャットをご紹介しましょう。

ニューヨークにある由緒あるホテル、アルゴンキン。ここには1930年代(一説には1920年代)から代々猫のコンシェルジェがいます。
オスなら「ハムレット」、メスなら「マチルダ」という名前が付けられることが決まっていて、野良猫や保護猫たちが勤務してきました。彼らの仕事はゲストの出迎え、荷物や備品のチェック(匂いを嗅いでいるだけかもしれません)、スタッフの仕事ぶりを監視するために、オフィスには専用の椅子まで設けられています。ロビーで猫に出迎えられるとはなんと嬉しいことではありませんか。

◆アルゴンキンホテルのサイト(代々の猫を見ることができます)
http://www.algonquinhotel.com/story/algonquin-cat/

8代目ハムレット
 
アルゴンキンキャットを題材とした本
『猫ほど素敵な商売はない』
https://wagahaido.com/shopping/archives/4735
 

とにかく働く猫たち

最近は猫たちが実際に働いている写真集が増えてきたように思います。
猫たちの働きをじっくりご覧いただくのは写真集の方が向いているかもしれませんね。
そこにいるだけで可愛い猫。そんな彼らが働いているならその店はさぞかし千客万来でしょう。
 
『猫のハローワーク』
https://wagahaido.com/shopping/archives/16472
 
最後に、決定的な本をご紹介しましょう。
猫と人間の歴史からひもといて、現在までどれだけ猫が人間に「貢献」しているかを述べたものです。猫は寝ているのではなく、寝たふりをしながら人間を監視し、深遠なる思索にふけっている…のだと思います、というか思いたいです。

ちなみに当店には猫店長は出勤していませんが、代わりにご近所の猫たちが時々顔を覗かせます。多分猫本屋に就職しようと狙っているに違いありません。
 
「退屈をあげる原画展」開催のお知らせ

2019.6.28(金)~7.15(月・祝)11-18時 *7/1、4、8、11は店休
作家在廊(予定) 6/28-30 
*あくまで予定ですので時間はお問い合わせください。

吾輩堂リアル店舗の記念すべき第一回目の展覧会として、紙版画家・イラストレーターである坂本千明さんの著作『退屈をあげる』(青土社)の原画展を開催します。紙版画で刷られた繊細でいとおしい猫たちをご堪能ください。
展示のほか書籍(サイン本)、版画作品やグッズも販売いたします。
また7/5から寅印菓子屋さんの猫にちなんだお菓子も販売いたします。

★会期中はネット通販での坂本さんの商品販売を停止します。どうぞご了承ください。

福岡市中央区六本松1--3-13
☎ 092-791-1880
https://wagahaido.com/