ワタシの本音 技ありの人間関係

耳から入る毒

幼いころマンガを見ていると母親に「これは目の毒だ」と言われ、本を取り上げられたことがある。では耳から入る毒もあるのだろうか。ことわざに「聞けば気の毒、見れば目の毒」とある。毒を含んだことばが耳から入り心身の不調の元となる。

卒業生が来た。せっかく入った職場をやめた理由を聞くと、職場の先輩たちの不満や人の悪口を聴くのが辛かったという。また心無いことばに深く傷ついたという。しかし、毒のない世界はありえないのだから、「耳からの毒」を解毒するのは自分の心を守るうえで大事なことである。2つの技を伝えたい。

1つは「毒べらしの術」である。これは耳から入った毒を瞬時に弱めるという高等技術である。やり方はいたって簡単で信じがたいほどである。例えば「君みたいなのを給料ドロボーというんだよ」と言われたら。「給料ドロボー」という毒語にシューッと一吹き、消毒スプレーを吹きかけるのだ。それが「確かに!」の一言である。

毒への耐性をつけるには昔の忍者がしたように少しずつ毒を取り込み、強い耳にすることである。「確かに」とつぶやくたびにあなたの耳は強くなる。これはゆっくりと毅然としてつぶやくのがコツである。

私はこの間、妻に「あなたのいい加減さを治しなさい」と言われたが、毅然と「確かに」とつぶやくとスーッとした。特に「妻」という字が「毒」に見える人にはお勧めである。どうしても納得のいかない時は、「確かに」の後に「しかしこの場合は違うよな」と自分にだけ聞こえるようにつぶやく。

次の技は「ユーモア盛り」と言う。普段から楽しい話を耳にストックしておくと毒の入る余地はなくなる。私は学生に楽しい話を聞いて耳の薬としている。

例えば、「アルバイトの面接に落ちた友人にその際の履歴書を見せてもらった。志望動機の欄に『遊ぶ金欲しさ』と書いてあった。それは犯行動機だろうと思った」。

もう一つ。「うちのおばあさんはもうすぐ夏なので美容院に行き、髪を短く切ってもらい、長いパンタロンとしゃれたシャツも買ってきた。何歳か若返った気になった。孫の1人に意気揚々とその姿を見せて尋ねた。『これでも、まだおばあさんに見える?』。孫は一言『ぜんぜん見えないよ。でもおじいさんに見える』」。

…確かに!