ホンネ 技ありの人間関係

念ずれば花ひらく

出席カードの裏に書いてあった。「どうしても自分が何になりたいか分かりません。どうしたらいいですか」。まじめな学生の切実な質問である。今人気のディズニー映画「ズートピア」は警察官になりたい夢を実現したウサギの成功物語である。心の底から「○○になりたい」と思うものがほしい。確かに人工知能と人間の違いは「モチベーション(動機)をもてるかどうかだ」とされる。言い換えれば「使命感」を持てるのが人間なのである。一流の人ほど動機・使命感がはっきりしている。使命感を起点に「できること」を努力してやっていると「その人にしかできないこと」に変わり、最後は「なりたい自分」になれるのである。


ハーバード大学で「思い出に残る教授」に選ばれた、北川智子さんもその一人。学生としてハーバードで受けた「ザ・サムライ」の授業。先生の口から出てくるサムライはすべて男性だった。なぜ? 思い切ってクラスメートの前で「男だけがサムライの歴史ではない。とにかくレディー・サムライは絶対いるのよ」と言い切った。このとき「ある種の使命じみた感覚」にとらわれたという。彼女がハーバードの先生になれた原点である(北川智子著「ハーバード白熱日本史教室」新潮新書)。

どうやったらこのような行動の原点となる使命感がもてるのか? 冒頭の学生の悩みである。ヒントはホームレス支援のプロフェッショナル奥田知志さんのことばにある。「使命という風が吹いたときにそれに身をゆだねること」と表現した。そして風を感じたら「自分の思いとか考えとか、都合とか好き嫌いというものを一部断念しなさい」と説く。風はいつも吹いている。大切なのはフト風を感じた時に身をゆだねる勇気である。あとは好き嫌いなく一直線。気が付くとなりたい自分がそこにいる。

実は私もそうだ。幼い頃「催眠術をかけたり、呪文を唱える魔法使い」にあこがれた。今それが実現している。私が教壇に立つとふしぎな催眠術にバタバタ学生が倒れる。講義の声は呪文のように教室に響く。この間、学生が話していた。「先生、この頃独り言が多いよね。自分で気が付いているのかね」「いやー、気づいていないと思うよ。みんなが聞いていると思っているようだから」。ほらね!