ワタシの本音 技ありの人間関係

ハゲます質問会

「人も自分も信頼できません。どうしたらいいですか?」。講義の最初に「質問会」をする。30年ほど続けている。学生は正直な疑問を出席カードの裏に書く。その質問に私が応えるのだ。

なぜ質問会をするのか。私の学生時代に「立派な人とはどういう人なんですか?」と先生に質問した。すると「中島君、そういうことはあんまり考えん方がよか」と言われた。ハッタリでもいい、ビシッと言ってもらいたい時がある。だから学生の質問には、はっきりと言いきるようにしている。


ある日の「質問会」の様子。
「人はなぜ長生きしたがるんですか?」。「死ぬのがこわいからです。さまざまな恐怖のうちの最大は“死の恐怖”です」

「そもそも人生って何であるんですか?」。キッパリと言わなければいけない。「それは幸せになるためです」

だんだん乗ってくる。「次!」

「祖母の死が怖いです。祖母が死んだら生きていけない気がします。どんな心を持てばいいですか」。
いい質問。「君はやさしいね。感情の種類には不安や怒りなどいろいろあるけれど、一番しんどいのは苦の感情です。仏教ではそれを“四苦八苦”とまとめる。八苦の一つに“愛別離苦”(あいべつりく)がある。愛する人と別れる苦しみです。おばあちゃんの死は苦しいけれど、覚悟を決めれば大丈夫です。言葉があるということは、あなたもその苦しみにも耐えられるということです」

変化をつけるために、逆にこちらから学生に質問をする。

「どんなものでも食べつくす。鳥も獣も、木も草も。鉄も巌(いわお)もかみ砕き、勇士を殺し、町を滅ぼし、高い山さえチリとなす。これは何?」。驚いたことに前列の男子学生が手をあげた。「“時間”です。ホビットの冒険の本の中に出てくる問答です」

知っているのにびっくりした。「時間」は史上最強である。あと200年もすれば、今いるどんな勇者も死んでいる。町もなくなり山さえ陥没する。なぜこの質問が大事か。最強のものこそ信頼に耐えうるからである。冒頭の自分も他人も信頼できない学生に、「時間を信じなさい」とキッパリ言いたい。君はきっと幸せな人生を送る。時を待つ勇気を持ちなさいと。

教室を出ようとすると背後から質問された。
「大切な所を守るのが毛でしょう。なぜハゲるんですか?」
う~ん。時を信じよう!


リビング北九州2018年5月12日号掲載