ホンネ 技ありの人間関係

お見事


ある言語学者は70歳を過ぎて新友(しんゆう)を創ろうと決意する。仲間にする条件を設けた。①仕事が自分と違う人。②頭が良すぎない人。③ケチをつけるのを偉いことと勘違いしていない人。するとドンドン新たな友人ができて月1回程度、歓談しながら食事をしているという(外山滋比古著『「長生き」に負けない生き方』講談社)。

③が一番大切なようだ。ケチをつける人は陰気で嫌われる。ケチとは不吉なことが起きる「怪しい事」(けじ)がなまってできた言葉だとされる。難癖のようなケチをつけられると不吉なことが起きるようで嫌な気持ちになる。仲間を増やすにはケチをつけない方が良い。しかし、物事には必ず二面性がある。つけた方が良いケチもある。今話題になっている東京都の豊洲市場についたのはまさに「怪しい事」についた大事なケチである。

うちの妻は「ケチは合理的でいいのよ」と常に言うし、実行している。その昔、新婚旅行で買ったお茶代まで手帳に付けている妻の姿に感動さえ覚えたものである。よいケチは「倹約=もったいない」であり、合理的である。しかし、世の中に横行するのは、やはり悪い「ケチ」のほうだ。冒頭の先生の友達づくりの基準は、“悪いケチをつける人(精神の卑しい仲間)は避けたい”である。

今、公開中の映画、トム・ハンクス主演の「ハドソン川の奇跡」では155人の命を救った機長にケチがつけられる。それと戦うには何が必要かぜひ観てもらいたい作品である。

今の季節ステキなのは稲穂が風に揺れている日本の美しい原風景が見られるからである。私はこれを人に例えて「美穂子(みほこ)さん」と呼んでいる。人間関係では相手を「み」とめ。「ほ」めて。「こ」う定して。「さん」成しないと対話は盛り上がらない。頭文字をつなぐと「みほこさん」になる。ケチをつけない、美穂子さんを目指したい。

娘の付けたケチを見事に退けた母親の話を聞いた。毛皮を買って喜んでいる母親に、自然保護派の娘がケチをつけた。「お母さんがそうやって喜んでいるカゲで、かわいそうな動物が泣いているのよ!」。それを聞いた母親、娘をキッとにらんで言った。「お父さんのことをそんな風に言うもんじゃありません!」