【其の壱】落語で季節を味わおう

はじめまして、アマチュア落語家の粗忽家勘心(そこつやかんしん)です。

昨今の落語ブームも手伝ってでしょうか、「何か書いてみないか?」とお話をいただき、今月からちょろちょろと駄文を書かせてもらうことになりました。どうぞよろしくお願いいたします。
 
確かに、一昨年あたりから若い人たちの間で落語が流行っている様です…。
…ただし、頭に「東京では」とつきますが…。
 
東京には、1年365日、毎日落語をやっている寄席がありますね。それも4軒も。
そして、それ以外にもあちこちでいろんな落語会が開催されています。

だから、東京では「ちょっと落語でも聴きに行くか」と思えば、それからほんの1時間後には寄席のお客席に座ることができます。

さらに小さな落語会を含めると、ひと月に実に1000件近くも開催されているそうです。(1日あたり30件以上も!)
まさに大ブーム!
 
ところが、福岡に限らず地方都市では、何ヵ月か先の落語会情報を細かくチェックして、「これは!」という会を見つけたら何ヵ月も前にチケットを買って、その日が来たらようやく何ヵ月かぶりに落語を聴けるのです。
この差は大きい。

「地方都市といえども福岡は全国でも5,6番目に大きな街だ」なんて威張っても、こと落語(伝統芸能全般)に関しては、そんなこと屁の足しにもなりません。いくらホークスが日本一になっても、天神がビッグバンしても、落語界では福岡は地方都市の中のひとつにすぎないのですね。

 僕は、アマチュア落語家として各地の公民館や学校、施設、商店などで落語をやっているのですが、「生で落語を聴いたことがある」というお客さんは実に少ないです。これはちょっと寂しい。でも身近に落語が無いのだから仕方ない…。
 
で、今月からこの場をお借りして落語を少しお勉強して、私が関わっている落語会情報も掲載しますので、ぜひぜひ落語を聴きに行きましょう!
 
落語はテレビや映画と違って、お客さんの頭の中で想像してもらう芸です。
本を読むのと同じ、想像できないと面白くも何ともないけど、想像できればこんなに楽しいものはありません。
 
よくある小噺で、
「ほぉ!珍しいですね、豚の散歩ですか?」
「まぁ失礼ね、豚だなんて、 この子はうちの可愛いペットのチワワよ!」
「いや、アタシ今そのチワワに言ったんですよ」という様な…。
 
こうした小噺であっても、お客さんにちゃんと想像してもらえると楽しい、そしてちゃんと想像してもらえる様にうまく喋るのが噺家の腕の見せどころですね。
 
落語はコントや漫才と違って次から次にギャグを連発するわけではないので、若い人たちには少し退屈かもしれません。
ただこの「場面を想像する」ことができれば、それはそれは味わい深いものになるのです。
 
「ママー、まだアメリカに着かないの?」
「黙って泳ぎなさい」
という様な…。
 
そして落語は日本の古典文化ですから、四季に密接につながっています。これがまた何ともよろしい。ギャグ(落語ではクスグリと言います)が一切無くても、それでもこの「季節感」を味わうだけでも落語は何とも良いものなのです。
 
ここでは毎月季節に合った噺を二三お届けしたいなと思っています。
私の拙い文章で少しでも季節を味わっていただけると幸いですね。
 

「猫の皿」

昔、旗師という仕事がありました。
あちこちを歩いて骨董品を探しまわり、江戸の道具屋さんに卸すのが仕事。いわば脚力のある骨董品のプロです。
ある旗師がたいして収穫の無かった骨董品探しの旅の終わりに、山道にある1件の茶店で一服します。

キセルを吸いながら遠くの景色を眺めますと、
「はぁ~、いい眺めだねぇ。あの川の流れ、水がまぁきれいなもんだ。で、あの川の両側、あれは桜かい?はぁ~、むこうの方までずーっと、きれいなもんだねぇ。こんな景色見たらなんだか寿命が少し伸びる様なきがするねぇ……」という。
このセリフでお客さんに春の里山の美しい風景を想像してもらうのですね。

そうすると今度は一気にズームイン、目の前でこの茶店で飼っている猫が地べたに置いた古い皿で餌を食べている。
「あぁーあ 猫ってやつはまた汚い食い方するもんだねぇ」と見ていると、なんとその皿は大変高価な「絵高麗の梅鉢の皿」
よし、なんとかしてこの皿を騙し取って江戸の道具屋へ持って行こう!
そうすりゃ一攫千金だ!と企んだ旗師。
「おい、じいさん! この猫可愛いから俺に三両で売ってくれよ!ついでにこの古い皿も付けてくれ」と、茶店のじいさんを騙そうとするのですが……
 
春のとてもいい噺ですね。
クスグリはあまり無いけど、最後のサゲ(オチ)が痛快です。
なぜ痛快なのか?
サゲというものは決してギャグではないのですね。
ではなにか?
「今まで落語の世界に浸って下さっていたお客さんに一瞬にして現実の世界に戻ってもらうためのもの」なのです。それが「サゲ」
サゲが痛快な猫の皿、ぜひ聴いてみて下さい。
粗忽家勘心の十八番のひとつです(^^)
 

「青菜」

ネタ(演目)に入る前に噺家さんが小噺なんかをちょこちょこっと話す、あれをマクラと言います。

マクラで、
「庭に水、新し畳、伊予すだれ、透綾(すきや)ちぢみに、色白の髱(たぼ)」
(髱とは日本髪の後ろ、うなじの上に張り出している部分、転じて若い女性を指す)
この歌が出たら夏の噺の代表「青菜」です。

意味はぼんやりとしかわからなくてもなんとなく良いもんでしょ?
「涼しい」という言葉を使わずに夏の気持ち良い涼しさを表現しています。
すだれを通して見る庭に打ち水がされて涼しげな風が入り、畳は青く、い草の匂いがして、薄い絹縮みを着た色白の女性にうちわで扇いでもらう様子が浮かんできます。
 
その反対、「暑い」という言葉を使わずに夏のうだる様な暑さを表現したのが、
「西日射す、九尺二間に太っちょの、背なで児が泣く、飯(まま)が焦げつく」…うだるような暑さですね。
 
「植木屋さん、ご精が出ますな」 青菜はこのセリフで始まります。
そして僕が好きなのが、「あぁ、やっぱり職人さんだ、うちの連中じゃこうはいかない、女中に水を撒かせてもあちこちに水溜りを作るばっかりだ。そこへいくと植木屋さんが水を撒いたらどうだい。青いものを通して吹いてくる風の涼しいこと、」
この部分を上手くやれる噺家さんでないといけません。
青菜というのはそういう噺です。

もちろん話は続いていきます。鯉の洗いを食べたり、夏のお酒を飲んだり、そして粗忽な植木屋さんが失敗したり…。
でも青菜の良さは断然この部分です、誰が何と言おうと、ね。
初夏の風物詩とも言える「青菜」ぜひともお聴きになって下さい。
 
ではこの辺で、また来月です。

落語会情報

・第13回 ひなたの会~春風亭正太郎、春風亭一蔵 二人会~

5月20日(日)14時開演(13時半開場)
あじびホール
前売り2500円(当日3000円)
ローソンLコード 83712
 
・第4回 黒猫屋落語会~粗忽家勘心ひとり会~
4月13日(金)20時開演(19時半開場)
黒猫屋珈琲店(警固四角そば)
ワンオーダー+投げ銭
 
・第1回 太宰府 白梅落語会~粗忽家勘心ひとり会~
4月27日(金)19時開演
茶寮 白梅(太宰府天満宮参道)
1500円(ワンドリンク付き)
 
電話予約はいずれも 090-7463-6256 粗忽家勘心まで
メール予約は、a.nakamura05311960@gmail.com
粗忽家勘心
福岡市の唐人町を拠点に活動するアマチュア落語グループの内浜落語会に所属。真打ち。
  • ・福岡市 人権落語講師
  • ・福岡市 男女共同参画落語講師
  • ・太宰府市 まほろば市民大学講師
  • ・落語「ひなたの会」主宰
福岡市や、太宰府市・那珂川町・糸島市・大野城市など各地で、古典落語を口演し、人権落語・男女共同参画落語等の口演も多数
H29年より、太宰府市まほろば市民大学の「落語コース」講師。
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ひなたの会
http://hinatanokai.petit.cc