落語で感じる季節の香り【皐月】

こんにちは、福岡市在住のアマチュア落語家 粗忽家勘心(そこつやかんしん)です。

GWが終わってしまいましたね、つまり福岡市民にとっては『どんたく』が終わってしまったわけですね。
お祭りはどんなものでもそうかもしれませんが、どんたくは特に「参加するととても楽しい」お祭りです。他のお祭りと比べるとどんたくは、参加する場合と見物だけする場合の「楽しさの差」がとても大きいのです。


まぁはっきり言って、どんたくは見ているだけではあまり面白くない。ところがパレードでも演舞台でも出演すると、それはもう楽しいのです。パレードでただ歩いているだけの自分に観客の皆さんが手を振ってくれる、演舞台の自分に盛大な拍手をおくってくれる、どんなに拙い素人芸にでも…です。

たとえ失敗してもブーイングを浴びることもなくみんな笑顔で見ていてくれます。ちょっとしたスターになった気分。

楽器演奏、フラダンス、ちびっ子のダンス、歌、体操…何でもありのどんたく…そして大盛り上がりでみんなハイテンション、二日間実に楽しそうです。
 
このどんたくがあるからでしょうか、福岡の人達は「出たがり、目立ちたがり」が多いと言われていますね、福岡出身の芸能人が多いのもこの気質があるからだからと。

だからかな? 福岡の人達は「あれぐらいなら俺にもできる」と考えがちだそうです。「あれぐらいなら俺にもできる」から、他人の芸にお金を払って見るということをしないのが福岡人。
僕は一昨年から東京の若手のプロの噺家さんを招聘して、「ひなたの会」という落語会を開催していますが、お客さんにきていただくのは毎回大変です。なかなか会場が埋まらなくてしょっちゅう苦労していますね。

実はこれは落語に限ったことではなくて、バンドの方々や他の古典芸能の方々、皆さん声を揃えて「福岡で集客するのは難しい」と言っています。
 
まぁどんたくが原因ではないかもしれませんが、一度落語を聴きに来てください。なんでも「ライブ」を見るのはいいものですよ。わかりやすいのはホークス!

「家でテレビを見る方が寝っ転がって見られるし、ファインプレーはすぐリプレイで見られるし、解説も聞けるし…」と思っても、やっぱりヤフオクドームでナマで見ると、臨場感・選手の躍動感・勢い…これを肌で感じられてまたドームへ足を運びたくなる、そう!それなんです。
 
落語だって同じです、ライブが一番、ナマが一番…という訳で今月は宣伝からさせていただきます。

『第13回 ひなたの会~春風亭正太郎、春風亭一蔵 二人会~』

5月20日(日) 14時開演(13時半開場)
あじびホール
前売り2500円(当日3000円)
ローソンLコード 83712
電話予約もできます。090-7463-6256(粗忽家勘心)
メール予約は、a.nakamura05311960@gmail.com

春風亭正太郎さんはもうあと三年もすれば真打ちに昇進しようかという超正統派、超本寸法の二つ目さん。丁寧に丁寧に話をしてまぁ見事に江戸の世界に我々を引きずり込んでくれます。

そしてその正太郎さんが今回是非にと、自ら相方に指名したのが春風亭一蔵さん。
パワフルな芸でどっか~ん!と笑わせてくれます。
どうぞ、5月20日はあじびホールへ足をお運び下さいませ。

「花見の仇討ち」

今月の落語紹介もまずは春の噺。
遅きに失した感はありますがお許し下さい、花見時期の上野のお山(古今亭は飛鳥山)が舞台の「花見の仇討ち」。
 
イマドキの花見と言えばせいぜい桜の下で宴会をする程度ですが、僕が小さい頃親に連れられて西公園なんかに行くと、「三度笠に股旅姿で刀をかざして何やらセリフを言ってるおじさん」や「藤娘の格好で踊ってる明らかに娘じゃないおばさん」を見たものです。昔は、年に一度の花見というのはそんなものだった様ですね。


これが江戸時代まで遡ればなおさらで、「花見の仇討ち」という噺は、仲の良い町内の四人組が花見客を驚かそうと、それぞれが巡礼・六部・浪人の仮装をして仇討ちの芝居をうつ。

ところが落語ですから粗忽者ばっかりでは上手くいく筈もなくひと騒動…という噺です。とても楽しくバカバカしい噺ですが、僕がこの噺を好きな点は「昔のわかりにくい言葉がいろいろ出てくる」というところです。

先に書いた、巡礼・六部・浪人。わかりますか? それだけではありません、

「率爾(そつじ)ながら、火をお貸し願いたい」
「この年月の艱難辛苦(かんなんしんく)」
「ここで逢ったが優曇華(うどんげ)の花咲き待ちたる今日」
「それがしにお預けください」
「御酒一献差し上げたく」


芝居をうとうというのですから、大仰なセリフが出てくるのは当たり前まのですが、他にも「天蓋(てんがい)」「笈(おい)」「錫杖(しゃくじょう)」という様な六部の持ち物の単語も…。
 
「だから何だ?」と思われるかもしれませんが、時代劇がめっきり少なくなってしまった昨今、こんな古い単語・言葉遣いを聴きながら落語の時代に身を置いてみるのも一興です。

「甲府ぃ」

変わったタイトルです、「こうふぃ」
コーヒーではありませぬ。
 
春の人情噺です。
甲府からひと旗あげようと身延山へ願をかけ江戸へ出てきた善吉。
いきなり浅草で巾着切りにあい無一文になります。
お先真っ暗、絶望の中でなんとか豆腐屋の主人に助けられ、豆腐屋で働かせてもらえることになりました。
 
先々の時計になれや小商人…根っから真面目な善吉ですから、それはそれはもう三年間真面目に一生懸命働きます。そうやって頑張ったのが認められ、そこの娘と一緒になって豆腐屋を継ぐことになり…
 
悪い人が出てこない、みんないい人達。

話の展開もさしてドラマチックでもなく…それがちょっとクサい様にも思えますが、それだけにお客さんを惹きつけ続けるのが難しい噺かもしれません。

お客さんを惹きつける為に新しいギャグを入れたりするのが最近の落語の流れですが、そういう事をあまりして欲しくない噺でもありますね。登場人物がみんな朴訥でいい人達だから余計にいろいろ変えて欲しくないです。

あまりにみんないい人すぎて、しばらくは「ウケない噺」として演る噺家もあまりいなかったそうですが、ここ十年くらいまたあちこちで聴く様になって来ました。時代の流れなのでしょうか。
 
普通のお豆腐屋さんの売り声は「豆腐ぃ~、生揚げ~、がんもどき」ですが、ここの豆腐屋さんの名物は胡麻がたっぷり入ったがんもどき。

ですから、「豆腐ぃ~、胡麻入り~、がんもどき」
 
やがて十年が過ぎて善吉が、あれから一度も甲府へ帰ってないので、両親の十三回忌と身延山へ願ほどきに帰りたい、と。

隠居した主人夫婦は「あぁ行っといで行っといで、今までずっと働きっぱなしだったんだ、ゆっくり遊んで来な」と善吉と娘を送り出す。
 
近所の人「おや珍しい、縁日にも行かない真面目な若夫婦がお出かけだよ、若旦那どこへ行くんだい?」

これが最後のサゲ、「甲府ぃ」という変わったタイトルにつながります。
どうぞ聴いてみてください。
 
という訳で、今回はここまで、また来月お会いしましょう。
 
粗忽家勘心でした。

粗忽家勘心
福岡市の唐人町を拠点に活動するアマチュア落語グループの内浜落語会に所属。真打ち。
  • ・福岡市 人権落語講師
  • ・福岡市 男女共同参画落語講師
  • ・太宰府市 まほろば市民大学講師
  • ・落語「ひなたの会」主宰
福岡市や、太宰府市・那珂川町・糸島市・大野城市など各地で、古典落語を口演し、人権落語・男女共同参画落語等の口演も多数
H29年より、太宰府市まほろば市民大学の「落語コース」講師。

ひなたの会
http://hinatanokai.petit.cc