落語で感じる季節の香り【神無月】

こんにちは、福岡市在住のアマチュア落語家 粗忽家勘心(そこつやかんしん)です。
 
たった2ヶ月前にあの暑かった真夏があったことをちょっと忘れそうになるくらい涼しくなりました。
「今年は秋は来ないのかなぁ…夏から一気に冬になるかもしれないなぁ…」なんてぼんやり思ってしまうほど狂気的な夏でしたが、やっぱり秋はちゃんと来るのですね。
 
さて、秋の落語…じつは秋が舞台になっている落語って意外に少ないんです。
どうしてでしょうね?
お月見があって、ススキが茂って、紅葉して、秋祭りもあって、実りの季節なのに、秋の落語ってとても少ない…。
僕が思うに、秋の風情はロマンチックすぎて落語に合わないからじゃないかなぁ…
粗忽者が活躍するのに秋はちょっと素敵すぎる季節です。
同じ様な気温でも春は季節も町も人も浮かれているから、笑うことがよく似合います。
だから春の落語は多いですね。
秋は落語の世界もしんみりしてしまうのかもしれません。
 
でも代表的な秋の落語がありますね、ご存知「目黒のさんま」。
まだ目黒という土地が山の中だった頃の噺です。
 
「え?目黒が山??」と思われる方も多いでしょう。
今では大都会になっています、おしゃれな店も多いし、高級住宅地でもありますね、目黒。
でも、江戸時代は目黒は江戸ではありませんでした。
たんなる山。田舎。「村」ですら無かった。人家もまばらで。
さてさて、日頃は魚と言えば冷えた鯛しか食べたことがないお殿様。
ところが鷹狩りに出かけた目黒の山で、農家で焼くさんまの匂いに食欲をそそられます。
 
さんまという字は秋の刀の魚と書きますが、その通りでございまして、おじいさんが朝早くに市場へ野菜を売りに行った帰り、ふと見ますと、どぎどぎと光るまさに短刀の様な脂の乗ったさんまが売っていた。これを婆さんと食ったら美味かろうと四五匹買って帰って焼いていた。
外で焼いていたものですから、紫色の細い煙がす~っと立ち昇り、なんとも良い匂いです。
 
「殿、さんま・いわしは下衆(げす)魚でございます、下衆・下民が口にするもの、決して殿が口にする魚では…」(青魚を好きな博多の人間にはなんとももったいないセリフに聞こえますね)
「黙れ黙れ、下衆・下民が口にいたし、余の口に合わんとは太平の贅というもの、武士たるもの一朝事あれば、千軍万馬往来のみぎりにあれが食えん、これは嫌いだと言って一軍の将が努まるか!…構わん、さんまの目通りを許すぞ」
「ははぁ~~~」
こうしてお殿様は生まれて初めてさんまを食べるのですが、まぁその美味いこと!
そりゃそうですね、旬のさんま、脂が乗ったさんまを、たった今焼いたばかり、しかも鷹狩りをして腹が減っているところへもって外で、自然の中で食べるのですから。美味くない筈がない。
 
「焼きあがったばかりのまだ火がくすぶっている真っ黒なさんまを皿に盛って、畑から取ってきた大根を脇に下ろしてもらって、醤油をかけたらまだ熱々ですからジュ~~っとなって…」
……あー、お腹が空いてきました。
 
お城へ帰ったお殿様、また毎日毎日冷えた鯛のお頭付きばかり、「あぁさんまが食べたいさんまが食べたい、さんまさんまさんまさんま…」
でもお城の台所方はさんまの強い脂でお殿様がお腹でもこわしたら大変ですから、さんまを蒸して脂を落とし、骨がお殿様の喉をささない様につみれにした。
 
「これがさんまと申すか??」
目黒の山で食べたあのさんまとはずいぶん違います。
ひと口食べてお殿様、
「これはどこでとれたさんまじゃ?」
「はい、本場房総で今朝方とれましたものを、日本橋から早馬にて持って参りました」
「あぁそれがいかん、やっぱりさんまは目黒に限る」
どどん。
目黒が山だったと知らない人が聞いてもピンと来ないサゲですが、最近は若い落語ファンも増えましたから、また充分にウケる様になってきた噺です。
実際に目黒に行ってみたら、確かにかつては山だったと思わせる急な坂道が多い街ですね。
 
三代目三遊亭金馬の目黒のさんまが好きですね。口跡とリズムがいい。
変なクスグリは無いからそれがまた心地いいです。
ぜひ一度聴いてみてください。
 
最後にひなたの会より落語会情報!
 
今週末に迫りました、
第15回ひなたの会「春風亭昇々、入船亭小辰 二人会」
14時開演 前売り2500円(当日3000円)
ローソンLコード82566
あじびホールにて

そしてアタクシ粗忽家勘心の年に一度の独演会も。
10月27日(土) 第三回 粗忽家勘心独演会
14時開演 1000円
唐人町商店街にて

また
11月2日(金) 第5回 黒猫屋落語会~粗忽家勘心ひとり会~
20時開演 ワンオーダー+投げ銭
黒猫屋珈琲店にて(警固交差点そば)
 
という訳で、今回はここまで、また来月お会いしましょう。
 
粗忽家勘心でした。
粗忽家勘心
福岡市の唐人町を拠点に活動するアマチュア落語グループの内浜落語会に所属。真打ち。
  • ・福岡市 人権落語講師
  • ・福岡市 男女共同参画落語講師
  • ・太宰府市 まほろば市民大学講師
  • ・落語「ひなたの会」主宰
福岡市や、太宰府市・那珂川町・糸島市・大野城市など各地で、古典落語を口演し、人権落語・男女共同参画落語等の口演も多数
H29年より、太宰府市まほろば市民大学の「落語コース」講師。

ひなたの会
http://hinatanokai.petit.cc