くらし さとこさんのやまもも日記

桜と山桃

JR戸畑駅から徒歩10分、銀行も郵便局も店もバス停も近い、便利な集合住宅に住んで32年。エレベーターなしの4階建てなので、6年前に一人住まいになってから子どもたちは転居を勧めます。忘れ物をしてまた4階へ…は閉口しますが、移れない理由が2つ。それは桜と山桃です。

階段を降りて左に歩いて20歩で山桃の木、それから10歩の所に桜の木があります。いずれも樹齢60年以上の大きな木です。

大人も子どもも山桃が実るのを楽しみにしています春には、「さとこの日記広場」の子どもたちといなり寿司を作って、桜の下でお花見します。「花びらを手で受け止められたらいいことがある!」とおとなも子どもも楽しみます。そして6月、梅雨時に山桃が赤い実をつけます。

この木に登るのが子どものステータスシンボル。3階近くまで伸びた木にやすやすと上って枝を揺すり、山桃をばらばらっと落とすAさんを、一番下の枝にも手が届かない幼い子どもたちは賞賛の瞳で見つめます。

そして、みんなで大きな傘を反対向きに広げ、落ちてくる実を受け止めます。黒ずむくらい熟した実を集め、洗って優しく拭いたらガラス瓶に詰め、氷砂糖を加えれば山桃シロップのでき上がりです。

炭酸で割ってもおいしいし、夏のかき氷にかけても美しいし、もちろん山桃酒も作ることができます。小さな種を気にしなければジャムもできます。桜と山桃、そしてエレベーターのある家が、どこかにないものでしょうか。

鍬塚聰子(くわつかさとこ)さん
【プロフィル】元中学校教諭。週に1度、子どもたちと一緒に日記を書いたり、料理をしたり、誕生日会を楽しんだりする活動「さとこの日記広場」(http://satokono.littlestar.jp/)を開催。現在、21年目。