くらし 高橋徹郎の“超”ショートショート

【1分間小説】大人の神様、子どもの神様


大人の神様、子どもの神様

ある時、雲の上の世界で「大人の神様」と「子どもの神様」が喧嘩を始めた。
それは人間の大人と子どもどっちが純粋なのかについてだった。
大人の神様は「人間の大人は純粋だぞ」と言い、子どもの神様は「いやいや人間の子どもの方が大人よりも純粋だ」と言って引かない。
そこで、神様たちは大人と子どもの純粋さを比べてみることにした。

まず、子どもの神様が子ども達の頭上に桜の花びらを散らした。
はらはらと落ちてくる花びらを見て子どもはそれを食べようと口をパクパク開けて飛びついた。
うまく口に入ると子ども達は大喜びした。
その様子を見ていた子どもの神様はニコニコしながら「ほら純粋だろう」と歓んだ。

次に、大人の神様がビルの谷間に1万円札をばらまいた。
ビルからわんさか大人が出てきて1万円札を奪い合い、人間の大人は狂喜乱舞した。
その様子を見ていた大人の神様はニコニコしながら「ほら大人だって純粋だろう」と歓んだ。

子どもの神様は「純粋というのは、自分の気持ちに素直になることだろう?だったらこの姿を見てみろ」と言って、子ども達の中に母親を与えた。
すると子ども達は我先にと母親に集まって抱きついた。
「ほら子どもは純粋だろう」

今度は大人の神様が、集まっている大人達に母親を与えた。
すると大人は母親から一目散に逃げ出した。
「ほらやっぱり大人の方が純粋だ。母親の前では素直になれない」


著者プロフィール

タレント・作家 高橋 徹郎

糸島市在住。KBC「ドォーモ」リポーターやラジオパーソナリティーとして活躍。フジテレビ「世にも奇妙な物語」をはじめ、ドラマ脚本家として全国的に活動。2014年から糸島市議会議員を1期務める。
2018年、〝絶望〟をテーマにした短編集「誰もいない街」(書肆侃侃房)で作家デビュー。現在、自身初となる長編小説の執筆のかたわら、ショートショートの執筆や朗読会などのイベントも精力的に行う。同コラムでは、原稿用紙1.5枚以内の〝1分間で読める超ショートショート〟に挑戦。
問い合わせ等は右記メールから 55teturou@gmail.com