【1分間小説】お花畑


お花畑

私にはなんの役にも立たない特殊な力があって、悩んでいる人の頭に花が咲いているのが見える。

初めてそのことに気がついたのは小学生の時だった。
小学生らしく好きな女子の話になって、あの子も好きこの子も好きと言う友達の頭に能天気な花が咲いた。
大学生になって彼女とデートで食事に行った時も、あれも食べたいしこれも食べたい、あなた何にする?と言う彼女の頭に呑気な花が咲いた。

私は大人になり新聞記者となった。
仕事柄たくさん頭に花を咲かせている人たちを見た。

ある時は、取材のため大学受験の試験会場に出向いた。
たくさんの受験生が試験用紙に向かっている。
あちこちで花が咲いては消え、消えては咲いていた。

またある時は、スポーツ部からの助っ人で野球の取材の応援に入った。
その試合は万年Bクラスのチームが、珍しくAクラスに入るかという大事な一戦だった。
だが試合はピンチ。
ノーアウトで勝ち越しのランナーを許した。
ピッチャーを見る。
投げる球が決まらないのだろう頭に花が咲いた。
キャッチャーも頭に花が咲いた。
それならと監督を見る。
ピッチャーの交代を悩んでいるのだろう一番見事な花が咲いていた。

なかでも「一円玉をなくす法案」の審議をしていた国会の議場は、五円単位でいいのではないかだの、一円が落ちていても子どもも拾わないだの、コストが一円以上かかるだの、延々と議論が続き・・・、
『満開のお花畑』が広がっていた。


著者プロフィール

タレント・作家 高橋 徹郎

糸島市在住。KBC「ドォーモ」リポーターやラジオパーソナリティーとして活躍。フジテレビ「世にも奇妙な物語」をはじめ、ドラマ脚本家として全国的に活動。2014年から糸島市議会議員を1期務める。
2018年、〝絶望〟をテーマにした短編集「誰もいない街」(書肆侃侃房)で作家デビュー。現在、自身初となる長編小説の執筆のかたわら、ショートショートの執筆や朗読会などのイベントも精力的に行う。同コラムでは、原稿用紙1.5枚以内の〝1分間で読める超ショートショート〟に挑戦。
問い合わせ等は右記メールから 55teturou@gmail.com